北原白秋のひとり言

秋の野

秋の野

あの子がゆくよ
見たよなあの子
おんなじみちを
おんなじほうへ
だれだろあの子
ちいさなあの子
わたしのまえを
わたしのように

あの子がゆくよ
かみの毛がひかる
野のみちこみち
もう日は暮れる
はぐれなあの子
見たよなあの子
お月さま出たに
ほおーいと呼ぼうよ

秋の夕ぐれ、あのこがゆく。
見たようなあのこが、おんなじ道を、おんなじ方へ。
小さいあのこって誰だろう。
私の前を、私のようにあのこがゆく。
見たようなあのこって、もしかしたら自分自身なのだろうか。
あのこの髪の毛が夕映えに赤く染まっている。
さびしい野の中を、ちいさなあのこが歩いてゆく。
日暮れになり、辺りは薄暗くなり、暗闇になる。
お月さんもでた。「おおーい」

解釈の仕方は人それぞれでしょうが、私の前をゆく小さなあの子は、
白秋自身のような気がします。

團伊玖磨さんのメロディもいいですね。